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伊坂幸太郎「あるキング」


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図書館の棚に伊坂さんの本を発見!  今日は図書館に来てよかったと心が躍った。
読後・・感想。
さっきから言葉を探しているのだが、貧しいボキャブラリーのせいで、どの表現もしっくりこない。

山田王球(おうく)。  
熱狂的な野球ファンの両親のもとに生まれ、小さい頃から才能を開花させた天才的野球選手である。
この本は、彼の人生が語られている。

怪物打者と呼ばれるほど、敬遠以外はほとんどホームラン。
もちろん、両親の熱心な指導と彼の努力の結果ではあるが、彼を見守り応援してくれた周りの人々の
おかげでもある。
だが、あらゆる悲運に襲われ続け、私は最後まで王球がかわいそうでかわいそうで仕方なかった。
息子への愛情はわからなくはないが、両親のしでかしたことは、あまりにもやり過ぎ。
両親のせいで、彼の人生は大きく狂った。
ただ、それを王球は恨んでいない。  
笑顔はほとんど見せず、悲しみや怒りの感情も出さない。
そこがまた、やりきれない。
彼はいつも孤独だ。

野球の天才王球はふと気付く。 
自分のせいで、世の中のバランスが崩れ、野球をつまらなくさせているんじゃないか。
そうじゃない、そうじゃないのに。  
彼はこんなに頑張っているのに、どうしてこうなってしまうんだろう。

ときどき現れる3人の黒づくめの女性。  彼女らは言う。  「おまえは王になる」と。
この女性達、最後の参考文献に載ってる「マクベス」に現れる魔女なのだ。
「マクベス」はもちろんシェイクスピアの悲劇の1つだとは知っていたのだが、あらすじはほとんど
知らなかった。
ネット検索して、どんな話かをざっと読んだら、この本の中にも彼女達のセリフがところどころ出てきていた。
「きれいはきたない、きたないはきれい」「バーナムの森が動くようなことがなければ」etc・・。
でも、「おーく、おおくをのぞむがいい」ってのは、伊坂さんの遊びだよね?(笑)

じゃ、緑の獣も「マクベス」から?と思ったんだが、違うらしい。
人間では計り知れない大きな力が動く世界。 その非現実さの象徴だとか。
その獣は額に硬球がめりこんでいる。  運命が大きく変わる重要な時に、その獣は現れるのだ。

王球のことを「おまえ」と呼びながら、この話を語っていくのは一体誰か?
ラストにわかる。  あぁ・・そういうことか。  なるほど。

輪廻転生・・南曇が亡くなって王球が生まれた。
最後に生まれてくる子を、王球はユニフォームを着た姿で、きっとずっと遠くから見守り続けていくんだろう。

  
伊坂さんの本は、途中に悲惨な事件があったとしても、読み終わるとほっとすることが多い。
でもこの本に限っては、とてもそんな気持ちにはなれなかった。
だからって、嫌いだとか気分が悪くなったとか、そんなことは全くない。
むしろ、伊坂さんのまた違う側面を見たようで、読んでよかった。 
もちろん、伊坂さんらしさも随所に出てくる。  だから満足。
心に響かない本は、全くあらすじを覚えてなかったりするのだが、これはずっと私の中に残ると思う。

読み終わってから、また最初に戻り、じっくり2度読みをした。
伊坂さんだから、例によって伏線がいろいろ張られている。 
っていうか、私が気づいてない、見落としてる部分が多いので、また拾いに行かねばならない。
再読して、ますますこの本にのめりこんだ。
でも、この内容であるから、もちろん賛否両論あると思う。
あるとしたら、極端にね。
そう、それぞれ感じ方が違うから。  それも読書の面白いところだ。 
by heartfulwind | 2012-06-07 15:22 | 読書 | Comments(0)
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