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西川美和「きのうの神さま」


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西川美和さんの本を初めて読んだ。
映画になった「ゆれる」。  ワケあって観に行けなかったが、かなり高い評価を受けたようだ。
今度ぜひ読んでみたい。

で、この本は「ゆれる」のあとに映画になった「ディア・ドクター」をまた違った角度から見た話・・みたいな?
ってことは、「兄」が鶴瓶で「セイさん」が八千草薫・・か?
映画「ディア・ドクター」も観てないので、よくわからないが。
そんな5編の短編集である。

「1983年のほたる」
田舎町に住む小学生りつ子。  彼女はそこら辺によくいる普通の女の子。 
子供なのでいろんなものに興味を持ち、憧れの同級生もいたりする。
クラスの中で人気のある子達・・私はね、そんな女の子たちを「上級グループ」って呼んでましたよ。
修学旅行の時、そのグループに入れて、親にとても自慢げに話したことを覚えている。
で、りつ子は塾に通うため、週に2回バスに乗る。
そのバスの運転手が一之瀬時男。
夏祭りで会った時の彼は、ちょっとキモイ印象。
そんな運転手とバスの中で2人っきりになる。  そして、事故。
なんだ、全然りつ子の想像と違う人じゃない。 しっかりしてるし。
私まで勝手に不気味なイメージ抱いてた。  申し訳ない。
あとツッキー。  「匂坂月夜」なんて、やっぱり素敵な名前。
あ、「匂坂」を「さきさか」と読むって初めて知りました。(恥・・)
結局彼のお姉さんの死因はなんだったんだろうね。  すごく気になった。

「ありの行列」
僻地で働く医者の代わりに、3日間だけそこに行くことになった男の話。
ちょっと「Dr.コトー」を思い出しました。
セイさんのお願いは、さすがにドキッとしたな。
1人暮らしで長生きするのって、やっぱりつらいよね・・。

「ノミの愛情」
これは、結構ブラックですね。
いきなりトーマスくんが気の毒で・・。
で、夫。  なんだか、イヤだ、こんな男。  外ヅラばっかりよくって。
そして最後の驚く展開。  やりますねぇ、看護師さん。
これはやっぱり計画的ですか?
ちょっとすっきりした。

「ディア・ドクター」
父が倒れ、ずっと離れて住んでいた兄が駆けつける。
兄にとって、医者の父は太陽だった。 だが・・。
お兄ちゃん、ホントかわいそう。 読んでて苦しくなった。
過去の話は胸がしめつけられるようだ。 
でも、何十年も経ち、久しぶりに会った兄は、とっくに父を卒業していた。
心温まるラストにほっとした。

「満月の代弁者」
4年間1人で田舎町の診療所にいた医者。
飽きたからという理由で、別の医者に引き継ぐことにする。
次の医者を連れ、患者のところへあいさつ回りをするのだが、とある家で・・。
両親が亡くなり、92歳の祖母を1人で面倒をみる孫娘が住んでいた。
う~ん・・彼女の涙の訴えはつらかった。
きついよね、全部1人でしょいこんで。
父母への看取りの後悔で、今度こそはと自分に厳しく課す彼女。
医者が言った大ウソが、彼女をずいぶん楽にしてあげたと思う。
表情が優しくなったことで、少し救われた。
そして、次の医者の頼もしい言葉を聞いて安心した。
まだまだ闘いは続くけどね。
そして、また病院勤務に戻るべく、車を走らせていたら・・。
そう、満月だね。  彼の居場所を教えたのは。  満月は孫娘。  
優しくて、とてもいい終わり方だった。

どの話も面白かった。  いいねぇ、西川さんって。  
とても文が上手で、読みやすくて、引きこまれた。
また他の本も借りてこよう。
by heartfulwind | 2012-06-25 18:18 | 読書 | Comments(0)
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