Heartful Wind

heartwind.exblog.jp
ブログトップ

小川洋子「ブラフマンの埋葬」


d0179686_2175566.jpg

小川洋子さんの本を読むのはこれで何冊目だろう。
好きな本と、苦手な本があるのだけれど、この本はとても気に入った。

少し「猫を抱いて象と泳ぐ」と似ている。  あ、話は全然違いますよ。
あの話は、実はあまり好きではないのだが、作品から漂う雰囲気が似ているというか。

とても優しくて、繊細で、穏やかで、ひそやかで・・。
だけど、無駄のないキリッとした部分も併せ持っている。

ブラフマンは、語り手である「僕」が飼っている動物の名前。
「僕」は、あらゆる芸術の創作者のため古い農家を改造して作られた「創作者の家」で、管理人をしている。
ある夏の日、ブラフマンは森の中で親とはぐれ、キツネに襲われただかして傷だらけになり、創作者の家の
裏庭のごみバケツの横で震えていた。
それを「僕」に見つけ出され、ペットとして一緒に住むようになる。

ブラフマンという名前をつけてくれたのは、創作者の家に住んでいる、墓に名前を彫る碑文彫刻師。
なんて、カッコよくて素敵な名前なんだろう。
クラシカルで、ダンディで。  私は最高に気に入ってしまった。

そして、ブラフマンは一体どんな種類の動物なのか、最後までハッキリとしない。
いずれ、動物名がちゃんと出てくるものだと思って読んでいったのだが、結局「ブラフマン」は最後まで
「ブラフマン」だった。

体全体は茶色い短い毛で覆われ、「僕」の腕と胸にちょうどよくすっぽりおさまる大きさ。
話をする時はけっして視線を逸らさず「僕」の目をじっと見つめ、チョコレート色の可愛い瞳とよく動く
黒い鼻を持ち、手には水かきがあり、太くてしっかりした力強い尻尾がある。
ちなみに、この尻尾は食事の催促の時、ものすごい音量で床を打ち鳴らす。
想像するだけでおかしくてたまらない。
私はなんとなく、カワウソのイメージで読んだのだが・・。
とにかく、とても人懐っこく、甘えん坊で、素直で、臆病で、私はもうこのブラフマンが可愛くて可愛くて
仕方なかった。

でも、この本の題名は「ブラフマンの埋葬」。
最後には「僕」がブラフマンを埋葬するのだと覚悟しながら読んでいった。

だから、この雑貨屋の娘よ。
この娘いつか何かやらかす・・と思って見ていたのよね。 
案の定、やってくれたじゃない。

本当は、その保健所に勤めてるらしい彼氏にブラフマンのことをチクるのかと思ったけど、「私、そんなに
意地悪じゃないもの」と言ってたから、すっかり安心していたのに。

ブラフマンのエピソードが散りばめられたこの本。
上手にミルクが飲めなくて、トイレも覚えられなくて、なんでも齧って部屋をめちゃめちゃにしてしまった
幼児期。
「僕」と森に散歩に行き、泉で生き生きと泳ぎ、疲れたら「僕」のおなかの上でお昼寝。
夢中で息さえせずに、最後まで真剣な眼差しで食事をするブラフマン。
泉泥棒を捕まえた凛々しいブラフマン。
本当に本当に可愛いブラフマン。

ダメだ・・もう、思い出すだけで泣けてくる。

ブラフマンの埋葬シーンも、涙で文字が見えなくなるほど泣いてしまった。
あんなにブラフマンを嫌っていた高齢のレース編み作家の女性。
一晩でブラフマンのために真っ白いおくるみを編んだ。
ホルン奏者が遠く森の中まで響かせてホルンを吹く。
一緒に埋葬した品々にも、私的にとても思い入れが強くて、本当に号泣した。

こんなに泣いたのは病院で読んだ「出口のない海」以来?
あれ? 他にもあったっけ?  ダメだ、忘れてしまった。^^;

この本、ペット飼ってる方は読まない方がいいかもしれません。
あまりにもせつなくなって、涙が止まらなくなると思います。
[PR]
by heartfulwind | 2013-08-23 21:09 | 読書 | Comments(0)
名前
URL
削除用パスワード