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朝井リョウ「桐島、部活やめるってよ」


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我が家で愛読している新聞は朝日新聞である。
読売や毎日に浮気したこともあったが、やっぱり朝日が一番面白いと思う。
興味深い記事がいろいろ載ってるし、毎朝読むのにとても時間がかかる。


その朝日新聞の土曜版「be」に「作家の口福」という、様々な作家さんが食にまつわるエッセイを書くコーナーがある。
そこに、先日朝井リョウさんが書いているのを読んだ。
そしたら、そのエッセイがかなり良くて、俄然彼に興味を持った。
彼の本を読みたくなり、だとしたらやっぱりこの「桐島、部活やめるってよ」だろうということで読んでみた。
ブックオフで100円だったし。
この本は小説すばる新人賞を受賞していて、彼のデビュー作である。


高校生の部活がらみの話。
この本がヒットした時、実は全然興味がなかった。
高校生の部活の話なんて、青くてオバサンとしてはついていけなさそうで。
実際、その前年まで高校生だった朝井さんが19歳で書き上げた作品である。
まさにイマドキの高校生ですよね。
でも19歳が書いたとは思えぬ文章力に驚かされた。


中は7章に分かれ、男女の高校生5人の話で構成されている。
1人がダブっていて、最後におまけ的な話が1編。
題名にある肝心の「桐島」は彼らの口から名前が出てくるだけで、その5人には入っていない。
最初目次を見た時、それぞれ5人の名前が並んでるのに、なんで桐島がいないの?と思った。
でも、桐島が部活をやめることによって、その5人の立ち位置に変化が生じるのだ。
巧いね。 表現も巧いけど構成も巧い。


自分も何十年も前に高校生やってましたけど、同じクラスで上と下かぁ。
それって小学校の世界からありましたよね。
私は「上」の女の子たちを「高級グループ」と呼んでました。
もちろん私は入ってませんでしたが。
高校の時はあったかなぁ・・?
それほど明確なものはなかったように思う。
高校の3年って長かったように思ったけど、今となっては3年間なんてもう1ヶ月間くらいなもので。
悔やむのは何か部活に入っておけばよかったと。
入りたいのは何もなかったのよねぇ・・。
それなりに楽しい高校生活だったけど、もっと楽しい思い出を作ることができたんじゃないかと。
って、コレいつも言ってるね。^^;


で、この本。
ちょっと全体的にテンションがローになる感じだった。
みんな痛々しくてね。
特に映画部の前田涼也の話。
パン買うためにレジに並びながら、必死に話し続ける武文は、読んでてホントきつかった。
かすみの言葉に救われたけど、途中で息苦しくなってしまった。


実果の話も。
けなげにお母さんに合わせる彼女。(えらい)
彼女の章は他の子の話とちょっとカラーが違ってて、私としてはかなり思わぬ展開で。
読みながらショックで瞳孔が開いてしまったよ。


文庫本で読んだから、かすみが14歳の時の話が最後に加えられている。
これがね、どうにもやりきれない話で。
出来たら、宏樹の話で読み終えたかった。
背中に『ひかり』を浴びて、前向きに歩き出すってことで、後味がずいぶん違ったと思う。
桐島に「大丈夫、お前はやり直せるよ。」って言ってやろうって、なんかイイ感じだったんだけどなぁ。
確かにかすみの章も、前に踏み出すという方向で終わるんだけど・・友未の方は全く解決してなくて、ずっとボトル洗ってるし。
ラストにまた少しテンション下がったことは否めない。


でも、けっして読んでガッカリしたという感じではなく。
それぞれ未熟な自分を自覚して、その部分に自分なりになんとか折り合いをつけて、目をつぶったり開き直ったりして前進しようとしている姿は、高校生のまだまだ子供で不器用なところを、実に巧く表現していると感心した。
印象に残った箇所は、最上位にいる宏樹が、クラスでは目立たない涼也に『ひかり』を感じたところ。
なぜかいつもイライラしてる宏樹くん、驚くと同時に、羨望を感じたんだろうね。
なんか、気分がスッとしたよ。
してやったりみたいな。
あと、竜汰がブラバンの部長がタイプと言ったところ!
誰か彼女に教えてあげてーー!
ところで竜汰の彼女って誰? 絵理香じゃないよね?
かすみでもないよね?
何度も読み返してみたけど、結局わからなかった。


それと、この小説あちこちにハッとするほど魅力的な表現があって、朝井さんのセンスの良さを感じました。
ちょっと今ここに載せようと思ったけど・・沢山ありすぎて割愛します。(笑)

とりとめもなくダラダラと感想を書きましたが、やっぱり読んでよかったと思える1冊でした。


by heartfulwind | 2015-08-16 21:25 | 読書 | Comments(0)
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