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カテゴリ:読書( 195 )

湊かなえ「物語のおわり」


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今年オープンした多賀城図書館で初めて借りた本。
わざわざ電車で持って帰る・・のが、今まで借りなかった理由だけど、ぷらぷら見てたら湊さんの本を発見したのでつい借りてしまった。
最近、生活がだらだらなので、2週間で読み終えるのか自信がなかったのだが(それも借りなかった理由の1つ^^;)湊さんならきっと大丈夫。
もちろん楽勝で読み終えました。
といっても、1週間かかりました。
だって、らしくないんだもの。
いつも先が気になって本が閉じられないほどの酷さがないんだもの。
全然イヤミスじゃない。
最後まで裏切られなかった。 温かかった。


8章に分かれた作品。
最初に、書きかけの平凡な小説。
時代は昭和ですね。
大して面白くなく、ラストは「えっ?これで終わり?」って拍子抜け。
湊さんなのに?って。
でもね、そこからなんですよね。
その後の章に出てくる登場人物が、その小説を読んでそれぞれ結末を想像していくんですよ。


人はその時の気分、環境、立場によって、考え方が変わる。
女性だったら、若かったら、病気だったら、親だったら、どう思うか。
この人はこういう考えで生きてきた人だから、きっとそう考えるだろうな・・ってのがどんぴしゃだったりすると嬉しくなる。


で、その書きかけの小説は、茶封筒に入った原稿として、人の手によって順番に渡されていく。
最初に手渡してから、6人目かな?  
その6人目に、最後に、それを手にするのがナント!
そうきたかーー。 驚きました。

でも、あかねさんはどうしてハムさんがわかったんだろう・・?
先生に聞いたのかなぁ?

そして、最後の最後。
結末のない小説の、本当の結末。
あったんですねぇ。
とてもすっきりしました。
きれいにおさめましたね、さすが湊さん。


描かれてる北海道の風景がとても綺麗で、一緒に旅をしてしてるような気分になれた。
北海道には1度行ったことがあるんだけど、また旅行したいなぁと。
富良野とか小樽とかは行ってないし。
今は体力的に無理だけど、いつか元気になったら、夫とぜひ。


最後に、どうか智子さん、元気なお子さんを産んでくださいね。
そして、いつまでも家族仲良く元気に暮らしてください。


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by heartfulwind | 2016-08-02 16:51 | 読書 | Comments(0)

伊坂幸太郎「ジャイロスコープ」


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また伊坂さんだが、伊坂さんは大好きなので、彼の本は全部読みたい。
最近はあっという間に期限が来てしまう図書館では借りず、中古の文庫本を買ってくることが多い。
伊坂さんの本、中古でも高いです!
400円越えとか。
読後売れば100円くらいは戻ってくるけどね。

こちらは7編の短編集。


「浜田青年ホントスカ」
スーパーホイホイってゴキブリホイホイみたいじゃない?
あ、先日読んだ「PK」でのゴキがまだ私の中に残ってる・・。
そのスーパーホイホイの駐車場で「相談屋」を営む稲垣さん。
稲垣さんにアシスタントをお願いされるのが浜田青年。
浜田青年の口癖が「本当っすか?」。
稲垣さんと浜田青年のやりとりが軽快で面白すぎて笑っていたら、客が持ち込む相談事がまた最高に面白かった。
客と稲垣さんの会話とその冴えた答え。 
正解ではなくてよいのだ。
何かのせいにするって、いい発想ですねぇ。
そして単に「楽しい」のはここまでで、浜田青年の正体は、実は・・?
アシスタントになって1週間後、伊坂さんらしいブラックが始まる。
まさかの真相ですよ。
で、ラストの解釈は読者次第。
私は「一緒に別の町へ行く」に一票。
稲垣さん、もったいないって。
また会いたい。


「ギア」
これはちょいとハード過ぎて、男っぽいというか。
体長3mで100キロ、10匹1セットのセミンゴって・・。
ワゴンの乗客が個性的で面白かったけど、強烈過ぎてエグかったね。
最後はメタリックなセミンゴの大群に飲み込まれていく。
ぞぞっとする無気味な話でした。


「二月下旬から三月上旬」
日付とともに、ややこしく話が進んでいくのだが、タネがわかれば納得できる。
脳の中に何人いるんでしょうかね。
でもどれが本当でどれが妄想か、かなり振り回される。
現在と過去もくるくる動くし。
正直ついていけずに終わってしまった。


「if」
挽回のチャンスにめぐまれた山本と他のバスの乗客。
同じことが20年後にまた起きるとは。
同じ犯人で、同じ乗客って。
時間変えればよかったのにねぇ。
それじゃ意味がないのかな?
でもよかったね、みんな!
BGMに「威風堂々」がかかってる気がするよ。


「一人では無理がある」
この話、とても微笑ましくて。
今回の短編集で一番好きな作品。
細かい部署により的確に構成されたこの会社は一体何をやっているのか?
リアリティあふれるファンタジー。
プレゼントを選び、届け先の情報を管理する部署にいる松田くん。
彼のうっかりミスが素晴らしい。
プラスドライバーが届いた先にいる子供は・・。
まさかの鉄板がどんなに役立ったか。
まさに松田くんは野村さんが言った「結果オーライの申し子」でした。


「彗星さんたち」
新幹線の中を清掃する仕事をする人たちの話。
彗星は「ほうき星」。
掃除の「箒」にかけて、「彗星さんたち」ということ。
掃除してくれる人に感謝しなきゃね。
彗星さんたちのおかげで、気持ちよく乗車できるんだもの。
当然だけど、新幹線の乗客にはいろんな人がいる。
赤ちゃん連れのお母さん、ワケありな幼い姉妹、DVの夫を持つ妹と無理やり連れ出した姉、グリーン車から降りる伯母を迎える若者。
それぞれドラマがあって。
で、それが「タイムトリップ」って説、面白かったなぁ。
不思議な話だけど、本当にそうだったりして。
心に残った鶴田さんの言葉。(三津子さんが幼い姉妹に言った)
「どんなことも、思っているほどは悪くない。」
「次の日には、少し物事が良くなっている。」
パウエル国務長官の言葉のようで。
前向きでいいですね。


「後ろの声がうるさい」
この短編集用に書き下ろされた作品。
巻末の伊坂さんのインタビューで「最後に受け皿みたいなものを置いておいたほうがいいのかな、と思いまして。」ですって。
なので、6編の登場人物が一気に出てくる。
ムリムリまとめた感が出てるのは否めないが、あちこちうまくおさめていて、ついニヤリ。
トイレにジョンがいたとは驚き。(笑)
そして、稲垣さんにまた会えた! 嬉しかったぞ。
バスジャックの犯人に助言したのは貴方だったのですか!
最後はスカッとせず、しみじみ・・だったけど、こういう終わり方もたまにはアリかな。


で、巻末の伊坂さんのインタビュー。
これがとてもよかったんですけど!
デビューしてからの15年を振り返ってくれて、長編や短編への思いも語ってくれて。
すごく読者を大切にしてくれてる方だなと。
頭いいし、面白いし、ますますファンになりました。
まだ読んでない作品が何作もあるので、早く全制覇したいです。


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by heartfulwind | 2016-06-29 14:49 | 読書 | Comments(0)

角田光代「ツリーハウス」


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この本、私の好きな読書感想ブロガーさんの記事を読んでからずっと読んでみたくて、前から図書館で借りよう借りようと思っていたのだが、単行本があまりにも分厚くて持って帰るのに重そうでスルーしていた。
中古の文庫本を見つけたので、ゲット。
やっと読めた。
読んだら、全然長さを感じさせず、一気に読めた。
とてもいい作品である。


「翡翠飯店」という中華料理屋を営む父と母。
その藤代家の次男の良嗣(よしつぐ)が、自分の家族のルーツを探る話。


ある日じいさんが亡くなる。
葬式のあと、ばあさんのヤエが「帰りたいよう」と子供のように言う。
「うちに帰りたい」と。
別にボケてるわけではない。
それを聞いた良嗣が「一緒に行こう」と言い出す。
「おれ、なんでもするしさ」って・・いい孫じゃないの。
そして、ばあさんの帰りたい「うち」=満州へ、ばあさんと叔父(ばあさんの息子)の太二郎と良嗣の3人で旅に出ることになる。
なんたって、ヤエさん87歳ですからね。
何かあったら、良嗣1人じゃ心細い。
でも、ヤエさんとても元気で中国でも1人で勝手に出かけちゃったりして、結果的に無事に旅は終わるんだけどね。


ヤエの人生は本当に波乱万丈で・・。
戦争に振り回されたつらい日々。
すべて「時代」のせいですね。
子供のくだりは泣けた。 せつなかった。


良嗣は家族全員ゆるくて、軽くて、流されやすくて、根無し草のような風に思っているのだが、実は大きな間違い。
それぞれを掘り下げてみると、とても濃い人生を送っている。
全く軽くない。
ずしりと重い。
亡くなっている人もいるので、つらい話も多いのだが、心温まるエピソードもふんだんに織り込まれてあって涙あり笑いあり。
少し時間があるからちょっと読もうと思って本を開くと、面白すぎてなかなか閉じることが出来ないのだ。


心に残るシーンがいっぱいあった。


満州から日本に引き揚げる時の世話になった食堂の老夫婦と若夫婦との別れ。
船倉で冷たくなった子供。
子供たちだけで、東京タワーを見に行った冬の日。
女の子のように可愛らしく、きょうだい思いで優しくて、お店の手伝いもよくする末っ子のモト。
自分の息子に敢えて弟の名前の「基」の一字を使った名前をつけた慎之輔。
「逃げることは悪いことではない、闘うばっかりがえらいんじゃない。」と言う父。


ヤエさんを李さん一家に会わせたかったなぁ。
いくら探しても結局会えなかった。
戦後60年以上も経ってるんだもの、しょうがないっちゃしょうがない。
でもどうしてもお礼が言いたかったんだよね。
それだけが心残りだったんだよね。
全然関係ない店主にお礼を言って、少しは気が済んだかな・・。
料金を受け取らなかった店主の優しさも心にしみた。


何も持たない祖母と祖父が出会って、今の家族を作った。
家族を作るものは「根っこ」ではなく「希望」。
すごくいい締めくくりの言葉だった。


今回この感想を書くのに、もう1度最初からじっくり読み直してみたら、なんだか涙がぼろぼろ出た。
えらく、感動しちゃったなぁ。
じわじわくるんだよね。
本当に読んでよかった。


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by heartfulwind | 2016-06-24 18:40 | 読書 | Comments(0)

伊坂幸太郎「PK」


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読書感想書くの、すんごい久しぶりだー。
その間、全く読書してなかったわけではなくて、ただ感想を書くのがめんどくさくて・・。^^;
ちょっと書く気分になったので、またぼちぼち書いてみたいと思います。


PKって何?というほどサッカーには興味ない私。
大丈夫かな?ついていけるかな?と少々不安だったのだが、大好きな伊坂さんの作品なので読んでみた。

全然大丈夫だった。
とても伊坂さんっぽい本。
大変面白かった。


でも、最後まで読んで、解説を読んで、ようやく理解したくらい、ややこしい内容。
他にもいろいろ解釈はあるだろうという感じの解説だったが、私的にはほとんど最後の大森さんの解説で納得だった。


これはSFのジャンルになるのかな?
「PK」「超人」「密使」の3編からなる未来の小説。
「PK」が『A』という世界、「超人」が「PK」ではない『A'』の世界。
登場人物が同じなのに、状況が、展開が、少し・・あるいはかなり食い違う。
あれ?さっきと違う!と「PK」を読後「超人」を読むと戸惑うが、その疑問は最後の「密使」で解かれる。


時間スリねぇ。
伊坂さんらしくて、スマートでオシャレでとてもいい。
出てくる会話もあいかわらずテンポよくてキレがある。
くだらないようで、さりげなく重要なことを言っていたり。
だらだら読んでると見逃しますね。 集中、集中。
あちこち心に残る名文があって、魅力的。


それとゴキブリ。
なんでゴキ?・・ゴキが出れば人の行動に影響が出るから。
まさにその通りだよ!
人はゴキを見るとなんらかのアクションを起こす。
しかも、この虫は3億年以上前から姿を変えず存在する。
そこがポイント。
伊坂さんのセンス最高。
目のつけどころがいいよねぇ。


ホントこの本は読めば読むほど、味わい深い。
何度も読む必要あり。
だって2度読み以上しないと、まず理解できない。(私だけか)


そして、伊坂さんらしく、最後は爽やか。
楽しいラストだ。
そこがまたとてもイイ!


やっぱり伊坂さん好きだなぁ。


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by heartfulwind | 2016-06-09 13:45 | 読書 | Comments(0)

宮下奈都「誰かが足りない」


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題名を見た時ミステリーかと思った・・が、違った。


レンガ造りの古くて小さなレストラン「ハライ」。
そのお店に来る予約客6組のそれぞれの話。


「予約1」は、東京の大学に進学するため、卒業したら帰ると言って北海道から出てきた男性のストーリー。
会社の倒産により、就職は失敗し、彼女にも去られる。
う~ん・・暗くてね、いきなり。
コンビニでの御園との会話は緊張したよ。
まぁ、最後は前向きな感じで終わったからほっとした。
結局、この方は1人で行くのかしら。


「予約2」は認知症の女性の話。
これもあまり楽しい話ではなく・・。
ご主人とハライに行けばよかったのにねぇ。
女の意地?
認知症がどうかは、「最近気になったニュースは?」と聞けば一発でわかると、前にテレビで見たことがある。
99%の認知症患者は答えられないそうだ。
夫に先立たれるのはつらいなぁ・・。
私も夫より1日でも先に、逝きたいもんだ。


「予約3」は幼なじみ2人の話。
「予約1」と「予約2」のような話がずっと続くのかと、このまま読み進むのがイヤになってきたのだが、この話はよかった。
お客さん6組の話の中で一番気に入った。
結婚しちゃえばいいのに~。
で、あの文鎮はどういう意味があったんだろうね?


「予約4」はビデオを回していないと外に出られないお兄ちゃんの話。
なんでビデオ?
それは、現実を見ないでいられるから。
現実から離れて、外から眺めていることが出来る。
篠原さんの過去はちょっと悲惨でした。
遥花ちゃんはとてもいい子ですねぇ。
いじめられてる子に寄り添うなんて、なかなか出来るもんじゃない。
3人でハライ。 いいね、明るい光が差し込んでくるようで。


「予約5」はブッフェレストランでひたすらオムレツを作り続ける彼の話。
そうよ、オムレツはぐちゃぐちゃのどろどろが正解よ。
ま、人にはそれぞれ卵の好みがあるけどね。
彼の部屋の『使い方』が意外でした。
何の仕事よ?やばい仕事?って、とても怪しかったんだけど。
2人とも、夢がかなうといいね。


「予約6」は失敗の匂いを嗅ぐ能力のある女性の話。
カラメルを焦がしたような色?
なんとなく、美味しそうな匂いって感じがするけどね。
しかし、新宿駅なんかに立ってたら、あちこちでその匂いが漂ってそう。
ラストは偶然過ぎる気がしたけど、小説だからいいか。



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by heartfulwind | 2015-09-11 19:03 | 読書 | Comments(0)

恩田陸「六番目の小夜子」


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恩田陸さんのデビュー作である。
かなり前の作品(平成4年)だが、ファンタジー大賞候補だったようだし、気になったので読んでみた。


3年に1度「サヨコ」に選ばれた人が学園祭で芝居をするという、とある地方の高校。
今年はその6番目の「サヨコ」にあたり、その高校に津村沙世子という美少女が転校してくる。


最初はその沙世子が謎めいていて、軽いホラーっぽいし、ちょっと怖かった。
ビビリなもんで。
でも、最初だけでしたね。
あとにいくに従って、それほどでもなくなった。


学園祭の全校生徒での芝居はなかなか迫力あってよかったかも。
緊迫感あって。
あの中にいたら、絶対怖い。
で、竜巻? スゴイ偶然ですな。


結局は黒川の仕業ってことよね。
沙世子に手紙を送ったのも彼でしょ。
ただのイタズラ好きだったってオチ?
碑に書いたのも?(わざわざ彫ったのか?)
手がこんでる。 暇なん?
3年ごとってのがポイントだね。
知ってる生徒が誰もいなくなってからの・・ってことか。


最後はムリムリもってったなと全体的に雑な感じはしたけど、後半は「サヨコ」のからくりが知りたくて一気に読んだし、まぁまぁ面白かった。
気になるのは、加藤くんのその後。
心臓発作ってお遊びが過ぎるでしょ、コラッ!
で、犬どもは野放し?
美香子もあのまま無罪放免していいワケ?
なんか、あちこち放りっぱなしでしたね。
沙世子の正体も物足りなかったし。 
期待し過ぎたかな。
ま、秋くんとお父さんが素敵だったからいいけど。


なんか、高校生の話が続いたなぁ。
次は少し離れよう。


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by heartfulwind | 2015-09-03 17:02 | 読書 | Comments(0)

米澤穂信「さよなら妖精」


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スマホのアプリに「ふにゃもらけ」という育成ゲームがある。
去年の10月までmixiのアプリだったのだが、惜しまれつつ終了し、今年の2月にスマホで復活した。
遠い宇宙の星から暇つぶしにやってきたこの不思議な生物に、私は「フェアリー」と名前を付けて、とても可愛がっている。
育成系ゲームだし、どうせやるなら自分が愛しいと思えるキャラにしようと、ちょっと気合を入れて?つけた名前だ。
フェアリー=妖精ってことで、目について手に取った本がこの本である。


メルヘンチックな題名と全然違う内容だった。


舞台は藤柴市という地方都市。
高校生の守屋路行と太刀洗万智は、ユーゴスラビアから来た少女マーヤと偶然出会う。


ユーゴスラビアってもちろん知ってはいるけど、恥ずかしいが無知に等しいくらいの遠い国だ。
今回、この本のおかげで詳しく知ることができた。

ユーゴスラビアはマケドニア社会主義共和国、セルビア社会主義共和国、ボスニア・ヘルツェゴビナ社会主義共和国、クロアチア社会主義共和国、スロベニア社会主義共和国、モンテネグロ社会主義共和国の6つの国家からなる連邦国家。
1943年から1992年まで存続した。


それぞれの独立国家になるための紛争が凄まじかったんですね。
映像でかつてのサラエボオリンピック会場が破壊され悲惨な状態になってるのを見たことは覚えてるんだけど、遠い遠い地で全くの他人事。
今回ネットでいろいろ調べてみたら、民間人の大量虐殺や民族浄化(家屋の浸入と略奪、資産の強制接収、強姦、強制追放や収容)という異民族排除は、20年ほど前にあったこと。
20年前って、つい最近でしょ。
なんせ、私、今年結婚20周年なんでね。 
ちなみに今日が入籍記念日でして。
まぁ、そんなことはいいんですけど。


マーヤは好奇心旺盛で、無邪気で、天真爛漫で、聡明な女の子。
政治家になって今ある6つの共和国を統一し、分かれている6つの文化を止揚して、7つ目のユーゴスラビア文化を作りたかった。
副題が「THE SEVENTH HOPE」である。
7つ目の希望。 本当にかなえてあげたかった。
結局、6つの共和国はそれぞれ完全に独立して、ユーゴスラビアは消滅してしまったのよね。
そこに至るまで、紛争による死者が何千、何万、いや何十万人といたことか。
人が人を殺す。 あまりにもむごたらしい。


マーヤの好奇心のおかげで、私もずいぶん知識が増えた。
クイズ番組を見たような。
なにげない日常のミステリー。
郵便の「〒」って、逓信の「テ」から転じたものなんだってね。
これ常識でした?^^;
送別会での名前の由来も、なかなか興味深かった。


そして、ラストにかなりの衝撃を受けた。
思わず「ひっ!」と声が出てしまった。


同じ時代を生き、年も近く、同じ地球に住む人間。
なのに、生まれた国でこんなにも運命が違う。
平和な日本にいて、何不自由なく毎日をのほほんと生き、熱中することも何一つない守屋と、夥しい数の犠牲者を出しながら残虐な紛争を続ける母国を持つマーヤ。
太古の昔から一国であった日本人には、民族同士でいがみ合うユーゴスラビアという国の本質を理解できない。
そんな2人の対比が効果的に描かれていて、ラストへの衝撃度が大きかった。
神社や山中のお墓を見に行ったり、神秘さをからめたところもいい。


ユーゴスラビアについていろいろ勉強になったし、後半はグングン加速して一気に読ませる本だった。
だが、衝撃が過ぎたあとは、ひどくせつなくて悲しい気持ちになった。
苦かった。
やっぱり戦争を扱う小説は読みたくないと思った。


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by heartfulwind | 2015-08-25 16:56 | 読書 | Comments(0)

朝井リョウ「桐島、部活やめるってよ」


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我が家で愛読している新聞は朝日新聞である。
読売や毎日に浮気したこともあったが、やっぱり朝日が一番面白いと思う。
興味深い記事がいろいろ載ってるし、毎朝読むのにとても時間がかかる。


その朝日新聞の土曜版「be」に「作家の口福」という、様々な作家さんが食にまつわるエッセイを書くコーナーがある。
そこに、先日朝井リョウさんが書いているのを読んだ。
そしたら、そのエッセイがかなり良くて、俄然彼に興味を持った。
彼の本を読みたくなり、だとしたらやっぱりこの「桐島、部活やめるってよ」だろうということで読んでみた。
ブックオフで100円だったし。
この本は小説すばる新人賞を受賞していて、彼のデビュー作である。


高校生の部活がらみの話。
この本がヒットした時、実は全然興味がなかった。
高校生の部活の話なんて、青くてオバサンとしてはついていけなさそうで。
実際、その前年まで高校生だった朝井さんが19歳で書き上げた作品である。
まさにイマドキの高校生ですよね。
でも19歳が書いたとは思えぬ文章力に驚かされた。


中は7章に分かれ、男女の高校生5人の話で構成されている。
1人がダブっていて、最後におまけ的な話が1編。
題名にある肝心の「桐島」は彼らの口から名前が出てくるだけで、その5人には入っていない。
最初目次を見た時、それぞれ5人の名前が並んでるのに、なんで桐島がいないの?と思った。
でも、桐島が部活をやめることによって、その5人の立ち位置に変化が生じるのだ。
巧いね。 表現も巧いけど構成も巧い。


自分も何十年も前に高校生やってましたけど、同じクラスで上と下かぁ。
それって小学校の世界からありましたよね。
私は「上」の女の子たちを「高級グループ」と呼んでました。
もちろん私は入ってませんでしたが。
高校の時はあったかなぁ・・?
それほど明確なものはなかったように思う。
高校の3年って長かったように思ったけど、今となっては3年間なんてもう1ヶ月間くらいなもので。
悔やむのは何か部活に入っておけばよかったと。
入りたいのは何もなかったのよねぇ・・。
それなりに楽しい高校生活だったけど、もっと楽しい思い出を作ることができたんじゃないかと。
って、コレいつも言ってるね。^^;


で、この本。
ちょっと全体的にテンションがローになる感じだった。
みんな痛々しくてね。
特に映画部の前田涼也の話。
パン買うためにレジに並びながら、必死に話し続ける武文は、読んでてホントきつかった。
かすみの言葉に救われたけど、途中で息苦しくなってしまった。


実果の話も。
けなげにお母さんに合わせる彼女。(えらい)
彼女の章は他の子の話とちょっとカラーが違ってて、私としてはかなり思わぬ展開で。
読みながらショックで瞳孔が開いてしまったよ。


文庫本で読んだから、かすみが14歳の時の話が最後に加えられている。
これがね、どうにもやりきれない話で。
出来たら、宏樹の話で読み終えたかった。
背中に『ひかり』を浴びて、前向きに歩き出すってことで、後味がずいぶん違ったと思う。
桐島に「大丈夫、お前はやり直せるよ。」って言ってやろうって、なんかイイ感じだったんだけどなぁ。
確かにかすみの章も、前に踏み出すという方向で終わるんだけど・・友未の方は全く解決してなくて、ずっとボトル洗ってるし。
ラストにまた少しテンション下がったことは否めない。


でも、けっして読んでガッカリしたという感じではなく。
それぞれ未熟な自分を自覚して、その部分に自分なりになんとか折り合いをつけて、目をつぶったり開き直ったりして前進しようとしている姿は、高校生のまだまだ子供で不器用なところを、実に巧く表現していると感心した。
印象に残った箇所は、最上位にいる宏樹が、クラスでは目立たない涼也に『ひかり』を感じたところ。
なぜかいつもイライラしてる宏樹くん、驚くと同時に、羨望を感じたんだろうね。
なんか、気分がスッとしたよ。
してやったりみたいな。
あと、竜汰がブラバンの部長がタイプと言ったところ!
誰か彼女に教えてあげてーー!
ところで竜汰の彼女って誰? 絵理香じゃないよね?
かすみでもないよね?
何度も読み返してみたけど、結局わからなかった。


それと、この小説あちこちにハッとするほど魅力的な表現があって、朝井さんのセンスの良さを感じました。
ちょっと今ここに載せようと思ったけど・・沢山ありすぎて割愛します。(笑)

とりとめもなくダラダラと感想を書きましたが、やっぱり読んでよかったと思える1冊でした。


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by heartfulwind | 2015-08-16 21:25 | 読書 | Comments(0)

三浦しをん「舟を編む」


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「大渡海」という新しい辞書を編纂する話である。
3年前の本屋大賞受賞作。
辞書とは、世の中に散らばる無数の言葉の海を渡る舟。
その「舟を編む」。
辞書作りの話でなぜ題名が「舟を編む」?と疑問だったが、この本を読み終えて、その意味がわかった。


最初、辞書を作る話なんてちょっと地味だなと思った。
でも三浦しをんさん作だし、本屋大賞だし、映画になっちゃったし・・ということで読んでみた。
大変面白かった。

しかし、最近(というか何年も)手で持って分厚い辞書を引くなんてやってませんねぇ。
学生の時はずいぶんお世話になったのに。
実は、わからない字があるとスグ意味を調べたい私。
今は専らPCでgoo辞書(たまにyahoo辞書)。
こうやってブログに文章をあげる時も、漢字の使い方が間違っていないか、しょっちゅう確認する。


主人公はその「大渡海」という辞書を作る中心人物馬締(まじめ)光也。
辞書作りひとすじ37年で思いを残しながら定年退職する荒木のあとを、引き継ぐ。
まぁ、定年退職しても、荒木はお目付け役として、毎週会議には顔を出すんだけどね。
で、「馬締」って名前、すごく珍しいですよね。
彼のことを紹介する時、同じ部の人が彼の名前をただ「まじめです」って教えただけなのに、聞いた側が「真面目(まじめ)なのか、いいことだ。」とうなづく。
確かに。 誤解するって、絶対。
これ以上真面目という言葉が似合う男がいるだろうかって思うくらい、名は体を表す?
それだけじゃなく、「香具矢」って名前もとても珍しい。
姓じゃなくて名前が香具矢って・・満月の夜に生まれたかぐや姫なのね。


その馬締くんを見つけてきた西岡くん。
いいですね、彼。 
やたら軽いんだけど、荒木に怒られたって全然めげなくて、楽しいったらありゃしない。
ある意味オアシス。 心なごむ。 彼の存在は大きい。
だけれども、チャラいながら、実は心の中に鬱屈してる部分もある。
彼は辞書編纂の仕事を精一杯やってきたのだ。
配属されたからには、仕事として割り切って頑張った。
なのに、上の評価は低い。 
言葉に対する馬締の感覚には、とても太刀打ちできない。
でも彼には弱った自分にそっと寄り添ってくれる麗美がいる。
彼は彼なりに自分の役割を心得ていて、きちんと「やるべきこと」をやりとげてから新しい異動先へと去っていく。
カッコイイじゃない。


馬締が戦力(始めは下っぱ)として参加してから、「大渡海」が辞書として出来上がるのにナント15年!
いやいや、長い。
こんなにかかるもんかね。
「大渡海」の監修をしている国語学者の松本先生も、すっかり老いてしまう。
もしかして・・というイヤな予感が、最後に当たってしまった。
返すがえすも残念。


1冊の辞書を作り上げるのに、どういった工程で、どんな作業を経て、どれだけの人たちが動くのか。 
言葉は膨大な数である。 並大抵な苦労ではない。
そうそう、辞書の紙にもこだわりがあったのね。
気づかなかった。
ぬめり感ねぇ。 
なるほど、確かに辞書って薄いんだけど、言われてみれば手になじむぬめり感ってものがあるような気がする。
ってことで、さっそく我が家の三省堂の新明解国語辞典を実際に引いてみた。
ホントだ! 中年になってすっかり手の脂がなくなった私の指でも、ちゃんとページをめくれる。
スゴイ。 今更ながら、新しい発見。


辞書作りなんて、全く未知の世界で、それをこんな面白い楽しい作品に書き上げる三浦さん、やっぱり素晴らしい。
登場人物もみんな素敵だし。
テンポよくコミカルな部分は「まほろ駅前」にちょっと似てるかな。(あの本も大好きです)
笑いあり、心が温まり、感極まって涙ありの、実にいい話でした。
いろんな意味で勉強になったし。
松本先生のところは本当に泣けたんだけど、辞書のあとがきに西岡の名前が載ってるって部分が特に気に入った。
さすが、馬締くん。


そうそう、これは文庫本のみの特典で、巻末に「馬締の恋文 全文公開」がある。
馬締カラー全開で、期待を全く裏切らず、楽しく拝見いたしました。
漢文って高校の授業以来読んだかも?
こんな意味わかんない恋文を、香具矢さんがしっかり受けとめてくれて、本当によかった。


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by heartfulwind | 2015-08-04 19:39 | 読書 | Comments(0)

原田マハ「カフーを待ちわびて」


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『 カフー ----------- [果報] 与那喜島の方言で、いい報せ、幸せ 』と、最初にページをめくると書いてある。
で、この本の中では、カフーは主人公明青(あきお)が飼ってる黒のラブラドール犬の名前。
第1回ラブストーリー大賞受賞作である。


ベタベタのラブストーリーだけじゃないところがいい。
後半に思いもよらない展開になる。
それも、二転も三転も。
ちょっと予想に反し(幸の正体ね)いろいろ振り回されて面白かった。
カフーがいつもいつも俊一に吠えてたのも納得。


舞台は沖縄にある島。
沖縄の方言って、難しいですねぇ。
東北もかなりわかりにくいと思うけど、沖縄の言葉はほとんどわからない。


ラブストーリーなんだから、最後は穏やかに終わるのかと思いきや・・。
どうやって探すの? 
え、厳しいでしょ、絶対。


この本は2006年に受賞して、2009年に映画化されている。
明青が玉山鉄二で、幸がマイコだって。
明青は、玉山鉄二(なんかキザっぽい)というより、私の中では妻夫木(素朴な雰囲気)かな。
マイコもイメージ違うけど、You Tube見たら、若い時のマイコはイイ感じ。 
爽やかで。
最近のマイコは「流星ワゴン」とか「Dr.倫太郎」なんかあまりいい役やってなかったからなぁ。
あ、でも妻夫木とマイコじゃ、ホントの恋人同士になっちゃうね。(笑)


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by heartfulwind | 2015-07-08 12:46 | 読書 | Comments(0)